瞑想という静かな時間

「瞑想(めいそう)をやってみませんか」
こうお誘いしても、
「忙しくて、そんなヒマないよ」
と、返ってくることでしょう。
たしかに忙しいし退屈かもしれませんね。
一見すると堅苦しいようにも見えますが、
少しコツを覚えたら、
ぜひ、実践されることをお勧めします。
一時的に気持ちがリラックスできるだけでなく、
物の見方や考え方が変わってきて、
苦にとらわれた自分を解放できます。

わたしたちの心は知覚したことが思考となり、
感情となってため込まれたもので反応しています。
あれこれ対応するのも、
慣らされた思考や感情から起こります。
心を乱す先験的観念の思考や感情は、
自分の心を汚したり、
人を害(そこ)なったりすることもあります。
でも、瞑想を習慣づけていくと、
深く広く考える力が身につき、
現象に振り回されず、
イラつく心やムカつく心から解放されます。
正しい判断力や創造力が養われ、
自然や周囲の人とのつながりがわかり、
感謝や思いやりの心も培われるようになります。
つまり、自分を縛る縄から解放され、
ほんとうの自分をとりもどすことができます。
それは宇宙意識に達するということです。

わたしたちは、
忙しい、忙しいとせき立てられるように、
刻々と時間を消費しています。
しかし、少し立ち止まって考えてみると、
あの世に持っていけるものは何もない。
持っていくものは心だけです。
感謝や思いやりという美しい心の宝。
その宇宙意識を持って帰りたいものです。

仏教は、
「自分という人間を知れ」と教えています。
自分というものの本体は
顔かたちではなく心にあります。
その証拠に容貌は衰えていきます。
残るのは意識だけです。
こうしたい、ああしたいという欲求、
好き、嫌いという感情、
その意識が「わたし」ということです。
形式や現象は「虚仮(こけ)」、
心という本質は「真如(しんにょ)」と呼ばれています。
これを心から悟ると死への恐れもなくなります。

昔、甲斐国(かいのくに)の禅僧で快川(かいせん)という僧侶がおられました。
織田軍に寺を焼き討ちされたとき、
「心頭滅却(しんとうめつきやく)すれば火もまた涼し」と吟(ぎん)じて、
禅を組んだまま、
火炎の中で死んでいったと伝えられています。
「えっ、マジ?」
「熱いでしょう。裏口から逃げ出したんじゃないの?」
事実はわからないのですが、
死は現象にすぎないとして、
焼死を恐れない胆力(たんりよく)を持っていたということでしょう。
とても、そんなことはできないけれども、
瞑想を心がけるうちに、
現象や思惑に揺らがない心が身につくということはたしかです。

一般的に瞑想は空(くう)になることとされていますが、
やるうちには雑念が起こってきます。
雑念をとろうとすると新しい雑念になります。
そこで、わたしは「静慮(じょうりょ)」から入ることを勧めています。
まず、静寂(せいじゃく)な境地をつくって、
自分と向き合いながら考えるのです。
これまで親に対してどういう態度をとってきたか。
いままで夫に対して何をしてあげたか、
妻に対して何をしてあげたか。
親から何をしてもらったのか。
夫から何をしてもらったか、
妻から何をしてもらったか。
一つひとつ思い出してみましょう。
気づいていなかったこともわかってきます。
素直な気持ちにもどることができます。
感謝や思いやりの心もとりもどされます。
すなわち、それが宇宙意識です。

仏教をひらかれた釈尊は何ものも拝まれず、
この宇宙意識に帰る瞑想を実践されました。
悟りをひらいても、
欲望は起こり、
気持ちが乱れることもあります。
よって、いつも瞑想を心がけられたようです。

法華経には、
「常(つね)に坐(ざ)禅(ぜん)を好(この)んで閑(しず)かなる處(ところ)に在(あ)つて其(そ)の心(こころ)を修攝(しゅしょう)せよ」
と、心と向き合うことを勧めています。
瞑想はすべての人間を幸福に導くトレーニング法です。
毎日、これを心がけていくと、
心の革命をもたらすことまちがいなし。
坐禅には宗派によっていろいろな種類や方法がありますが、
本質はあまり変わりません。
香りのいいお香を焚(た)いて、
リラックスした気持ちで静慮(じょうりょ)すると、
解放されていく自分を感じることでしょう。
解放されることが大切なのです。
ぜひ、挑戦してみてください。

 

みずすまし29号(平成28年6月3日発行)

 

みずすまし29号表紙

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