正法事門法華宗

立ち上がるとき

中国の天台大師は『摩訶止観』に語っている。
「起は、是れ法性の起なり」と。
「起」とは立ち上がること。
「法性」とは気分のこと。
つまり、
ここ一番のやる気が大事ということ。
カネがないとか、
親がどうとか、
弁解や責任転嫁は気分が寝ているということ。
大事なことは気合の精神。
「やってみせる!」
根性で立ち上がれば、
開かない可能性の扉などない。

昨年のラグビーW杯2015の一次リーグ。
日本チームは根性で勝利した。
あれは八分のロスタイムに入った時の出来事。
南アフリカにペナルティが科せられた。
監督はペナルティゴールキックの指示。
選手たちはスクラムを選択。
監督は怒った。
イヤホーンとマイクをフロアに投げつけた。
だが、チームは左サイドへトライを決めた。
三十四対三十二で奇跡の逆転。
同点ではなく、
逆転劇を演じたやる気に感動した。
勝利に導いた立役者は五郎丸。
あのルーティンでの独特の「ポーズ」は話題になった。
だが、
ぎりぎりの状況でのチームの
ポジティブさが光った。

日本人は本番に弱い――
これは日本人に対する世界の定評となっている。
不安が多かったり、
緊張しやすかったりするのだろう。
直前の表情からほぼ分かる。
民族の遺伝子だと言われると悔しいではないか。
だが、
親の育て方に原因があるのかもしれない。
「なにをやらせてもダメ」
「おまえにはむずかしい」
やる気をはぎ取る親のせいかもしれない。
「失敗したっていいんだよ」
「君ならできる」
「楽しんできなさい」
こう背中を押すなら新芽も伸びる。
チャレンジ精神も起こる。
信念も自信もつく。
昔から、
「かわいい子には旅をさせよ」といわれている。
子どもを信じて、
何事もやらせてみればいい。
否定ではなく、
肯定してあげることが大切。

一昨年の夏、東京で大学時代の部活仲間と再会した。
夕食を囲みながら三々五々と語り合った。
「ハングリー精神」の話題になった。
「あの頃、よくこの周辺をランニングしたな」
「あの頃の練習、きつかったなあ」
「この前の同窓会のとき、菅さんも、
もう二度とあんな練習したくないって笑ってたな」
菅さんはサラリーマン、秘書、市議、国会議員を経て、
内閣官房長官になった。
「あの頃、総理官邸の前を青色吐息でランニングしていたけど、
まさか自分がそこに入ろうとは思いもしなかっただろうな」
「あの人、苦労人だよな」
「高校へは二時間をかけて自宅から通学したというから根性だよ」
「親の反対を押し切って上京して、
二年間、段ボール工場で働き大学へ入ったというからな」
「学費貯めてたんだろうな」
「そういえば、いつも破れた革靴を履いていたな」
「菅さんだけじゃない。みんなカネがなかったんだ」
「オレは新聞配達のアルバイトしていたけど、牛尾君は何をしていた?」
「ガードレール清掃や駅の掃除など、いろいろやったな」
「みんなきつかったんだな」
「だけど、先輩たちもそれぞれ成功したな」
「ろくにメシも喰えず、練習はきつかったけれど、
あのハングリー精神が今をつくったんだろうね」
「苦しかったけど、いい時代だったな」
「人生、やはり気合だよ」
店の玄関先で
互いに「気合い!」と、尻をたたいて別れた。

昨年末、ある高校生が寺に挨拶に来た。
「お世話になりました。
○○大学へ行くことになりました。
ボク、プロ野球選手をめざします」
彼は子供の頃、腎臓の難病にかかった。
泣くような練習を続け、
今では大きな身体になった。
袖丈が短くなった学生服で
体育系の子どもらしい表情が愛らしかった。
「稼いだら少し寄付してくれ」
ジョークを言ったら堂内爆笑。
高い治療費を払いつつ、
支え続けた親が偉かった。

昨年、私は「みきなろ夢の塾」を立ち上げた。
子供たちの稟の花を育てたい。
「一億総活躍社会」というが、
夢の足場は個性派教育にある。
その役割を担いたい。
人生は一度切り。
時は今、場所は足元。
やろうと思えばなんでもできる。
やってやれないことはない。
「起は、是れ法性の起なり」
不朽の名言である。

 

みずすまし28号(平成28年3月3日発行)

 

みずすまし28号表紙

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