正法事門法華宗

父として母として

人の親になることは、
人生の中で、
もっとも大きなターニング・ポイントだ。
父として母として、
まずほしいのは自覚と覚悟。
十人十色ではあるが、
ふつう女性は妊娠と同時に母性が起こる。
お腹に芽生えたいのちのために、
すべてを赤ちゃん中心に切りかえる。
男性は我が子を抱いてから父性が起こる。
子どもが生まれるまでは、
実感はなかなか生まれない。

私にも三人の子どもがいる。
初めて我が子を見たときは感激した。
両手で抱いたときは、
さらに感動がふくらんだ。
まだ軽いけれど、
いのちの重みがずしりと伝わってきた。
どんな人生が待っているのだろう、
守ってやるのは自分しかいないと思った。

赤ちゃんにしてみれば、
父親と母親は、
少しちがって映っているのかもしれない。
乳をふくませてくれるのが母親、
ときどきあやしてくれるのが父親と、
少しずつ認識していくのだろう。

子育てと仕事の両立は容易ではない。
仕事に追われていると育児は重い。
育児ノイローゼ――。
その孤立感は深い。
愛しいからこそ叱った自分を責める。
その繰り返しがつらくのしかかっていく。
妻を想う気持ちがあるのなら、
せめて半分くらいは背負ってあげたい。

老後は子どもだけが
頼りになるというのに、
大切なことを見失うこともある。
やさしさを知る者だけが
人にやさしさを与えられるということ。
愛を受けて育った子どもだけが
愛を与えられるということ。
それを知れば、
子どもから反動を受けることはない。

父として母としての理屈はいらない。
愛おしい我が子なのだから
抱きしめればよい。
仕事はきつくても
あたたかく、
楽しい家庭でありたい。

これは懺悔話。
私は仕事に追われるばかりで、
子育てはほとんど妻にまかせていた。
今年長女と次女のふたりが嫁いだ。
生まれたときは
いろいろときついときだったから、
心のゆとりがなかった。
結婚披露宴のファイナルステージのとき、
「叱ってばかりでごめんね」と声をかけた。
けれども
娘たちは健全に育ってくれた。
夜おそくまで仕事に打ち込む私の姿勢と、
家事育児をてきぱきとこなす妻の様子を
体感してきたと思う。
人間には戦わねばならないとき、
成さねばならないことがある。
それを示せたことがせめてもの贈り物。
いま、
新しい愛にめぐりあったのだから、
しあわせになってほしい。

子どもが幼いころには
スキンシップを大事にしてあげたい。
プール、海、遊園地、
七歳くらいまではワクワクさせてあげよう。
子どもは思春期に入れば親を避ける。
心をつながなければ断絶がつづく。
あたたかい空気だけが
明るい心を育てるのである。

人の世で、
親の愛ほど美しいものはない。
自分のいのちに代えて我が子を守る。
それは菩薩。
いのちにかけて子どもの成長を見守り、
やがて訪れる独立のときまで
苦労を厭うことはない。
なじられようと裏切られようと、
我が子を信じる気持ちは美しい。

子どものしあわせは、
そのまま親のしあわせなのである。
「おやおもう こころにまさる おやごころ」
子どもが親を想う以上に親が子を想う気持ちは深い――。
いまは、親の気持ちがわからない子どもであっても、
人の親となったときに
めざめることもある。
自分を信じ、
子どもを信じ通したい。

 

みずすまし22号(平成26年9月3日発行)

 

みずすまし22号表紙

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