正法事門法華宗

夫婦のかたち

「良妻賢母」を口にすると、
ブーイングが起こるかもしれない。
あり得ない男目線、だと。
でも、日本にそんな時代があったのは事実。
女性は家事のために夜遅く眠りにつき、
朝は早く起きて衣服や髪をととのえ、
朝食の準備をし、子どもを学校へ、
夫を仕事に送り出すと、
家中をきれいに片づけた。
夫に苦しむ女性、
父親におびえる子どももいたが、
むかしの日本女性の美学は、
世界に誇れるものであったという。
良妻賢母を過去の遺物にしたのは、
男から甲斐性がなくなったからかもしれない。

もう時代は変わって、
男性と女性を区別できない時代になった。
いや、「おねえ」のことではない。
「だったら、あなたが家事をして」
「おれは男だぞ」
「それってだれが決めたの?」
そう言われればなにも言えない。
ウーウーうなりながら、
どす黒い流れが渦巻く洗濯機。
父ちゃんが上になったり、
母ちゃんが上になったり
洗濯がすんで洗濯物を引き上げると
父ちゃんのシャツを母ちゃんのシャツが
グルグル巻きに締め上げている。
それをほどいて窓に干す男性の姿もほほえましい。

愛する者同士といっても、
いつもうまくいくとはかぎらない。
いっしょにいて楽しいかどうか。
信じられるかどうか。
気持ちが落ち着くかどうか。
そこらあたりで結果は落ち着くところに落ち着く。

どんなに愛し合っていても、
子どもができると、
愛情の対象が移ることもある。
ある人は言った。
三十代は忍耐、
四十代は惰性
五十代からは無言。
そのうち子どもは大きくなり、
自分の家族をつくる。
あとに残るのは二人だけの侘(わ)び住まい。
気持ちを通じ合わせなかった報いが
余熱さえうばってしまう。
「あのときの燃えた恋心はいったい?」
四十年前の蘇る思い出に苦笑いすることもある。
夫婦の気持ちが通じ合わないと先は見えている。

夫婦のかたちにかくあれというものはない。
いろんな夫婦がいていいのだろう。
けれども、めざしたいかたちというものはある。
自己反省がある家庭。
いたわりのある家庭。
感謝に満ちた家庭。
この三つが日々新たな生活のエネルギーを与えてくれる。
安心感に満ちた空気はそこでつくられるはずだ。

釈尊はおっしゃっている。
「煙を見て則ち火を知り、王を見て国土を知り、
夫を見てその妻を知るものなり」
妻がどんな人物であるかを知ろうとすれば、
まず彼女の夫がどんな人物であるかを知ればわかるという。
このわざわざ遠回りな言い方は、
ものの底には一切がつながり合っていることを、
明らかにされようとしたからである。
夫だけが良くて妻だけが悪いということはあり得ない。
妻だけが良くて夫だけが悪いということもあり得ない。
「だけ」などというものはこの地上にどこにもない。
「お前がこうだから、おれもこうなのだ」
「あなたがこうだから、私もこうなんです」
原因があるから結果があるけれど、
その原因にも原因がある。
言うなれば、
夫婦は後ろもなければ前もない一個のゴム輪。
「お前が悪く、おれは正しい」
そんな理屈からはなにも生まれてこない。
「そうじゃない、妻をそんな気持ちにさせたのも、
自分に足りなさがあるからかもしれない」
一歩引いて自分の責任を考える気持ち。
「私がこうして生活できるのも、
主人ががんばってくれているから。もし主人がいなければ……」
感謝の気持ちを忘れない日々。
その宗教的な気持ちによって
円満な家庭がつくられる。

ごちゃごちゃ考えるのはやめにしたい。
いい時も悪い時もビールを傾けて、
「おつかれ~」
「ありがとう~」
「ごくろうさま~」
「がんばったね~」
「よくやったね~」
ことばのバリエーションも増やしてみて、
明るく声をかけてあげたらいい。
いたわりのことば、
ねぎらいのことばが
家庭を明るくする。
家族は互いに喜んでいる顔を見たい。
うれしそうにしている顔を見たい。
その空気をつくる努力をする。
良妻賢母、良夫賢父の現代版はそんなところだろう。
縁あって一緒になったのだから、
夫婦のかたちは自分たちでつくりあげたい。

 

みずすまし21号(平成26年6月3日発行)

 

みずすまし21号表紙

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